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甲南中高春合宿(2004.3/21)
南中高春合宿(2003.3/30)
甲南中高夏合宿(2003.8/25)
 
トーナメント対局

甲南中学高校は全校生徒1200人足らずの中規模の男子校です。
男子校ゆえに、どうしても運動部が花形で、私の赴任した1997年当時、将棋部は同好会という任意団体で、部員数も2名。
その2名もいろいろなクラブをかけ持ちしており、いわゆる「腰掛けクラブ」でした。

少しずつ部員を集め、試合にも出るようになりましたが最初の1年間は、まったく試合に出ても生徒を勝たせてやることが出来ませんでした。
みんな黒星ばかりですから大会主催者の方も困惑されて、リーグ戦などの形式の時には最後の方は甲南の生徒同士であててもらう始末でした。

 それでも8年目の現在、部員数は中学高校合わせて30名足らずまで来ました。
毎日放課後、一つの教室に集まって部長今井克治君(高3)中学キャプテン中田憲宏君(中3)を中心に二時間半の練習をこなしている姿は壮観です。

チェスクロックと駒音が鳴り響き、部内のランキングを決めるリーグ戦を戦う目つきは真剣そのもの。
昨年などはアメリカからの留学生までがクラブ活動に参加しました。部員全員が片言でルールを説明したり親睦を図りました。最後に彼は試合に出て勝つことまで体験できました。

高校生は高校将棋連盟主催の個人戦(年3回)・団体戦(年2回)、中学生は中学生名人戦(年1回)が大きな目標になっています。
そんな試合に出ると「数攻めの甲南」と言っていただけるまでの人数に恵まれました。強豪がいて一人が負けてもまた次の一人が挑戦、というピラニアのような戦いぶり。
個人戦でもその姿勢は変わらず、「自分であってもなくても甲南から代表を出すのだ」というチームワークがモットーです。

そのおかげか高校生では全国大会・近畿大会を経験できる棋力にまで生徒が成長しました。
岡山県日生-頭島/日生町観光案内図   船乗込   バス停にて   バスの中にて


 赴任した当初は甲南は「お坊ちゃん学校」というイメージが内外に根強く、「どうして甲南の子が庶民的ゲームの将棋なんて」という雰囲気でした。
戦績が上がるに連れ、まず内側の理解が、そして徐々に外部の方にも「将棋の甲南」と言っていただけるようになり、現在では将棋部を目的にして入学試験を受けに来る受験生まであらわれて大変喜んでいます。

ひとえに3つのものに恵まれたと思っています。

まず「時代」に恵まれました。
近年、プロの方のイメージが社会的にも変わったことはもちろんですが、クラブ顧問になった頃に大流行した「藤井システム」などの新しい理論の書物が豊富にでまわるようになったこと。
初級者でも、ちょっとまわりがそれを説明してあげるだけで、あるレベルまで強くなれるようになりました。

それと「バックアップしてくれる」人に恵まれたこと。本校将棋部OBの竹村康正さんプロの島本亮四段はいつも試合や合宿に顔を出してくれ子どもたちに勇気を与えてくれます。
また藤原直哉六段藤本裕行さん、等々いろいろな方々がアドバイスをくれます。
その他、クラブの親睦会でバーベキューなどをやったりするとき、30人分の肉を焼くのは大変だろうと生徒のお母さんも手伝いに来てくれたり。
顧問が将棋に疎くても、疎いなりに一生懸命やっていれば必ず人が助けてくれる、という将棋界の暖かさを感じます。

 最後に「生徒」に恵まれました。私がクラブで言うことはどこかの野球チームではありませんが「県大会で優勝して全国に行きたいんや」ということだけ。
(理論は無いものですから・・・。)褒めることよりクサしたりぼやいたりのことが圧倒的に多いのですが、それでも将棋を嫌いにならずに続けてくれる生徒たち。将棋の魅力の深さを感じます。

勝負の世界である以上、生徒たちには「勝つこと」にこだわってもらいたいというのが私の思いです。
学校のクラブ活動というものは、「楽しめたらそれでいい」という人も多いのですが、「楽しみ」にも質があってやはり一つでも高いところにあがれば、また楽しみは大きくなります。
低いレベルでなれ合う「楽しみ」に妥協させたくない、「上には上が居るんだなあ」と思える体験を生徒にさせてあげたい、と思っています。

具体的な技術を身につけた生徒は確実に人間的な成長を見せてくれます。「地位は人を作る」などとよく言いますが、落ち着きのなかった生徒が強くなっていく過程でいつのまにか好青年に変わっている様子を見た時、将棋部顧問冥利に尽きます。

対局風景その1
島本亮四段による指導対局その1
指導対局
島本亮四段による指導対局その2

休憩/ボール投げ   島本亮四段による指導対局その4   対局風景その2   島本亮四段による指導対局その3


お昼タイム
夕食風景
バーベキュー
寝室にて

 




  そんな中、今年も3月21日〜24日まで、恒例の春合宿を行いました。
甲南中高将棋部は春と夏年2回合宿を行うのですが、春の場所は、岡山県日生の頭島というところ。
島の外周は2qぐらいの、のどかで小さな島。民宿「花房」(0869-72-1350)はあったかいお母さんが魅力の将棋部の定宿。

新鮮な魚を毎晩振る舞ってくれ、生徒が夜遅くまで将棋を指しているのを暖かく見守ってくれます。
この3泊4日、高校生は5月の兵庫県高校将棋選手権団体戦のレギュラー3人を決めるための過酷なリーグ戦に明け暮れます。

島本4段、竹村OBの指導にも熱が入り、ほんとに寝食を忘れるほどに生徒は将棋にのめり込みます。
中学生も高校生の棋譜を取りながら、近い将来の自分のイメージを重ねていきます。
そして空いている時間で自分の技術を高めるため、詰め将棋をといたり、中学生同士で作ったチームでの団体戦を行ったり工夫した練習を取り入れています。
 
この合宿を経て、みんなで納得し決めた3人がこの5月5日の団体戦に臨みました。
結果は現在全国チャンピオンの灘高校に1勝2敗で敗退しましたが、あと一歩まで追いつめることができたことが今後彼らの大きな自信になっていくことだろうと確信しています。
個人戦では佐々木恒之君(高2)が優勝し、7月30・31日に徳島でおこなわれる「全国高校総合文化祭将棋部門男子個人戦」に出場することが決まりました。

今後も甲南中高将棋部は明るく仲良く、そして厳しさを大事にがんばって参ります。変わらぬご声援ご助言をお願いいたします。

甲南中学・高等学校 塩見恵介